これを『運命の恋』と呼ばないで!
好きになってしまいそうな気がする。
私のことを「バカ山」呼ばわりしかしない先輩を。



「ダメだなぁ私。優しくされると直ぐそんな気持ちになっていく」


大学時代も同じだった。

慣れないサークル活動で戸惑ってた時、優しく指導してくれた先輩に恋をした。

先輩とは2歳年が離れていた。

優しい顔立ちの人で、少しだけ体型は太めだった。

私のことを「妹みたいに可愛い」と言って扱ってくれてたのに、キスを許すと突然にケダモノっぽくなっちゃって。

何もかも初めてを全部奪われてしまった。

それでも、先輩が好きだったから後悔はしてない。

だけど、先輩が卒業する時、「付き合いも終わりにしよう」と言われた。

先輩の故郷は遠くて、地元の県内に就職が決まったと教えられたからだ。


『ナッちゃんのこと忘れないよ』


駅の改札口で抱き合って泣いたことは今でも遠い夢か幻のように感じる。

そんな悲しい別れがあった後、大学を卒業するまでの間、他の誰とも付き合う気になれなかった。


そんな私が今、運命の救世主を探さなければならない立場に置かれている。

何処にいるかも知れない人を探し求めて、出来ることと言えば何だろう。


智花の言うようにやっぱり合コンに参加する?

それともオフィス内で誰か見つける?

思いきって結婚相談所へ駆け込んでみるとか?



「どれもしっくりこないなぁ」


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