これを『運命の恋』と呼ばないで!
「うっ…」


……と短い声を出したまま気を失った。

そう。モチロンただ眠り込んだだけだ。



ーーーーーーーーーーー


「空君のせいよ!」


女性の声が聞こえる。


「毎日ナッちゃんに残業をさせるから」

「俺は好きでさせてるんじゃないよ。若山の仕事が鈍いのが原因だ」

「だから総務課全体で引き受けようかって言ったじゃない。それなのに空君が甘やかすなって言うから、皆遠慮したのよ!」

「俺のせいなのかよ」

「そうよ、当然じゃない!」


耳元で言い合うのは止めにして。
こっちは眠くて仕方ないのに、いやでも目が覚めしまう。


「うーーん」


わざとらしく唸ってみるか。


「ナッちゃん!?気がついた!?」

「若山、起きろ!」


このセリフ、どっちが正しいと思う?

女性の声は私が気絶したと思ってる。
男性の方は、私が寝てると気づいてるだけ。


「うーーん……もう少しだけ寝かせてぇ……」


あと5分。ううん、10分間くらいお願い。


「何処までも呆れる女だなぁ」


男性の声は何処かで聞いたことがある。


「とにかく、このままもう少し休ませてあげましょうよ」


優しい女性だなぁ。感謝します。


「それよりも丁度いいから聞かせて。この間言ってたあれ、本気なの?」


(あれ……?)


さっきよりも声のトーンは落ちてる。

でも、声の主達は私の側から離れようとはしてない。

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