これを『運命の恋』と呼ばないで!
「ああ。折角声をかけてもらったんだ。チャンスがある時に活かしておきたいと思う」

男性の声が低い。
何かを決意しているみたいで、語尾を少し強めた。


「期間はどれ位なの?」


女性の声が不安そう。
その声を耳にして、こっちも聞いたことがあると思った。


「最低1年は頼むと言われてる。でも、通例からして3年は軽いな」

「3年!?」

驚いたと同時にガタン!と何かが倒れた音が聞こえた。


(うーーん、話をするのならもっと静かにしてよ……)


眠れないじゃん…と声にならない声を出して向きを変えてみる。
自分としては背中を向けたつもりでいたのに、どうやら顔を向けてしまったようだ。


「3年も行ったきりになるの!?」


さっきよりも声がハッキリと聞き取れる。
まずっ。今更向きを変えることもできない。


「ああ。多分な」

「そんな……じゃあ私はどうしたらいい?」

「適当にやっとけよ。別に縛りもないし」

「そんな言い方ってないでしょう!?私は空君の……」


(空君……?)


その呼び方には聞き覚えがある。

青空先輩の同期生達が、いつもそう呼んでるのを何度か耳にしたことがある。


(ーーと言うことは、今そこに居るのは先輩と……誰?)


眠い目を擦りながらうっすらと瞼を開ける。

急に黙り込んだ声の主達は、すぐ間近で声を発した。



「ナッちゃん?」

「起きたか?」


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