これを『運命の恋』と呼ばないで!
何かが二人の間にはあるんだ…と直感した。
私にいて欲しくなさそうな目を向けられた時点で、恋人同士なんだと思った。


(恋に発展するも何も、この間こっぴどく拒否されたばかりだし)


理由はそれでか…と納得がいった。
恋人がいるならいると、そう言ってくれたら良かったんだ。


(本当に不器用な男だなぁ)


変に優しくされたからときめいてしまったけれど、汐見先輩の存在が判明した今、二度と同じようには思わない。


恋になんて発展しない。
きっと救世主は別にいるんだ。



「はぁ…」


そう思うとまた婚期が遠のいてった気がする。
死期はまた一歩近づいて、確実に私を飲み込もうとしている。


「ほらほら!そんな陰気な顔してないで、ご飯食べに行こう!」


智花が誘う時はいつも、大抵同じビルの一階にあるレストランで食べる。
多国籍料理が食べられるレストランのメニューは、留学経験がある智花のお気に入りだ。



「今夜は何食べようかなぁ」


ビューティーサロンを経営している智花は、その才能とは逆に料理がまるで出来ない。
作れるのはアメリカのホームステイ先で教えてもらったチーズバーガーとマッシュポテトくらいで、後はまるでダメだと言うから驚きだ。



『あーあ、誰か私に三食料理を作ってくれたりしないかしら』


慣れない独り暮らしで、コンビニばかりをハシゴしていると話していた。


『この際ナツでもいいからさー』


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