これを『運命の恋』と呼ばないで!
この人達みたいに出来るなら、オフィスでのラブも可能なのかもしれないけれど、私みたいなお子様では絶対に無理だ。

そもそも無能な私を相手にしてくれる様な人がいない。その時点で考えるだけ虚しい。

ははは…と胸の内で笑った。
つまんないな…と思いつつ、届けられる料理を黙々と堪能していった。


「お前は気持ちいいくらいよく食うな」


出される料理が終わりに近づいてきた頃、私よりも多く食べてる鬼が笑った。
課内の連中がいるせいなのか、珍しく本物っぽい笑顔に見える。


「だってお金出して食べるんですよ!?皆みたいにお酒を飲んだりもしないんだから食べないと損です」


意外にも青空先輩はお酒を一滴も飲まないでいた。
飲まないんじゃなくて、飲めないだと後で知った。


「確かに飲む連中と同じように金払うんだから食べないと損だよなぁ」


まぁ食え、と差し出されたのはベビーコーンの串揚げ。


「もうっ。先輩は私の嫌いな物ばっかくれる」

「何だ、ベビーコーンは嫌いなのか?」

「嫌いですよ。ガシガシとした歯触りで口の中がザラザラして嫌です」

「紅生姜の時にも似た様なこと言ってなかったか?」

「あれは軋む食感と変な酸味が嫌いなんです」

「贅沢な女だ。じゃあコレやるよ」


ほら、と差し出されたのは豚バラの串揚げ。


「わぁ、お肉だ!」


遠慮なく頂く。


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