これを『運命の恋』と呼ばないで!
連れて行かれた場所は、オフィスから5分ほど離れたビルの地下街。
夜は飲み屋街になるその場所の入り口で、先輩はガラスの引き戸を開けた。
「いらっしゃいませ!」
大きくて元気のいい男女の声が響き渡った。
中へ入ると、なんとも言えない香りが鼻をくすぐる。
「ランチが食べれるって聞いたんだけど」
前を塞いでいる先輩の声がした。
「はい、頂けますよ。どうぞこちらへ」
案内役を務める女性店員に招かれて歩き始めると、目の前に大きなショーケースが広がった。
「わぁ…」
つい声が漏れてしまう。
色取り取りの漬物が並ぶガラスケースの前で、思わず足が立ち止まった。
「美味しそう!」
食欲がないのも、寝不足だったのも吹き飛んだ。
人差し指を唇に当てたまま、ガラスケースの中を見入る。
「若山、眺めるのは後からにしろ」
奥に行きかけた先輩が戻ってきて声をかける。
「あ…すみません。つい…」
嬉しくなって近寄った。
先輩は私を見てフ…っと目尻を下げた。
途端に胸が苦しく感じる。
でも、それを露わにしてはいけない相手だ。
きゅっと唇の端に力を入れて堪えた。
笑顔を合わせてはいけない。
この人には美人の彼女がいる。
先輩は私の様子を見て、一瞬眉尻を寄せた。
でも、直ぐに背中を向けて歩き始めた。
案内されたのは、店の奥に隣接された食堂スペースだった。
夜は飲み屋街になるその場所の入り口で、先輩はガラスの引き戸を開けた。
「いらっしゃいませ!」
大きくて元気のいい男女の声が響き渡った。
中へ入ると、なんとも言えない香りが鼻をくすぐる。
「ランチが食べれるって聞いたんだけど」
前を塞いでいる先輩の声がした。
「はい、頂けますよ。どうぞこちらへ」
案内役を務める女性店員に招かれて歩き始めると、目の前に大きなショーケースが広がった。
「わぁ…」
つい声が漏れてしまう。
色取り取りの漬物が並ぶガラスケースの前で、思わず足が立ち止まった。
「美味しそう!」
食欲がないのも、寝不足だったのも吹き飛んだ。
人差し指を唇に当てたまま、ガラスケースの中を見入る。
「若山、眺めるのは後からにしろ」
奥に行きかけた先輩が戻ってきて声をかける。
「あ…すみません。つい…」
嬉しくなって近寄った。
先輩は私を見てフ…っと目尻を下げた。
途端に胸が苦しく感じる。
でも、それを露わにしてはいけない相手だ。
きゅっと唇の端に力を入れて堪えた。
笑顔を合わせてはいけない。
この人には美人の彼女がいる。
先輩は私の様子を見て、一瞬眉尻を寄せた。
でも、直ぐに背中を向けて歩き始めた。
案内されたのは、店の奥に隣接された食堂スペースだった。