これを『運命の恋』と呼ばないで!
テーブル席が4つほどあり、既に2つは埋まっている。


「こちらでよろしいですか?」


手前から二番目の席に連れて行かれた。
先輩は頷いて座り、私も向かい側の椅子を引いて座った。

テーブルの端にはお漬物の入った容器が三つ並んでいた。サービスなのかどうか分からず、ゴクン…と唾を呑み込む。


「ヨダレ垂らすなよ」


失礼な鬼だ。


「垂らしませんよ」


そうは言っても自信ない。

店内に入った時から香る甘酸っぱさに、異常なまでに唾液が溢れてくる。

それを飲む込むだけで、結構大変な状態だった。



「昼御前でいいか?」


メニューを見ながら先輩が聞いた。


「何でもいいです!」


漬物さえ食べられるならと付け加えた。
先輩は笑うのを我慢してそれを2つ下さいと頼んだ。


「昼御膳をお2つですね、畏まりました。少々お待ち下さい」


リモコンを操作して注文を受け付けると、店員は「テーブル上のお漬物をどうぞお召し上がり下さい」と伝えて逃げた。



「先輩、このお店のこといつ知ったんですか!?」


ワクワクしながら漬物各種を小皿に移して聞いた。


「ん?昨日の飲み会の後、汐見が言ってた」


漬物の一つを口に運ぼうとして摘まみ上げた時に答えが返ってきた。
途端に食べる気が急に失せたけれど、食べないのもおかしい気がして口に運んだ。


「…っ美味しい!最高!」


しば漬けのシソの香りと酸味が、気分を爽快にしてくれる。


< 73 / 218 >

この作品をシェア

pagetop