これを『運命の恋』と呼ばないで!
ドキン…とする程深い色合いをした黒目は、私ではなく周りの何かを見通すかのように感じられた。


「とにかく診断してみましょう。この紙に漢字でフルネームを書いて。それから生年月日を西暦で記入して下さい」


言われるがままに差し出されたメモ紙に名前と生年月日を書いた。


「それじゃあ祈祷を上げるから、悪いけど表で待っててね」


祈祷を上げる時の自分の姿は異様だから見せられない…と言い、どの客の前でも決して見せたりしないのだそう。



「智花、あの人って本当に信用できるの?」


胡散臭くて問い質した。


「信用できるって!ホントにバッチリ当たるんだから!」


「ふぅん……」


半信半疑で待つこと10分。


「お待たせしました。中へどうぞ」


頬を蒸気させたクレハさんに呼び戻された。
館の中へ入ると、クレハさんは診断書と書かれた紙を取り出して話し始めた。



「貴女の前世は優れた科学者だったみたいです」


いきなり言い渡された言葉に、(やっぱり信じられない!)と思った。

クレハさんは診断書という紙に自分が見た前世の私を書き込みだした。


「いろんな研究成果を発表された謂わば天才肌だったようです。それ故に多くの方から賞賛も得たけど妬みも買った。前世でいろんな葛藤が生まれたからこそ、現世での貴女が在るみたいなんです」




< 8 / 218 >

この作品をシェア

pagetop