これを『運命の恋』と呼ばないで!
京塚先輩から連絡があったのは、週明けの月曜日の午後。


『今夜、この店で落ち合おう』


添付された写真と地図には、上品な店構えでも有名な懐石料理のお店が写し出されていた。


『楽しみにしてます』


社交辞令。
ホントは何となく気が重い。



「また寝不足か?」


この間と同じく自販機の前で会った人に聞かれた。


「今日はまあまあ眠れました。このところ、前よりも少し眠れてます」


だから、ほっといて…という意味。
青空先輩と関わると、気持ちが乱されてしまうから。


「ならいい。具合悪い時は早目に言えよ」


ぽん!っと頭を擦られた。

この人はホントに無意識過ぎる。

その何気ない優しさが、どれだけ私の求めてるものと合致するかも知らないでいる。


(ズルい。青空先輩なんてキライだ!)


去って行く背中を睨み付けがら思う。
思いながら後悔する。

好きだと思ってしまいたい。
救世主とか悪魔とか関係なく、あの人に触れてもらいたい。



でも……
それはやっぱりできない。

だって。

先輩には美人過ぎる彼女がいて、私には死期が迫っているから。

< 84 / 218 >

この作品をシェア

pagetop