これを『運命の恋』と呼ばないで!
「理斗先輩……」


いきなりそんなことを言われると戸惑う。
大学の2年間、ホントにこの人のことが好きで大切だった頃とは違う。


でも……


この人が救世主なら救われる?

死期は免れて、結婚はできる?

それが運命というもの?

信じた方がいい?




「………ごめんなさい……直ぐには答えれない……」


頭の中で浮かべてはいけない人の顔が浮かんだ。
私が今求めてるのは、目の前にいる人じゃない。



「あの……先輩?」


ガクッとなった人は、残念そうにしながらも微笑んだ。


「今の言葉、保留に取ってもいいよね。じゃあまた会ってもらえる?」


ズキン…と胸が痛んだ。
先輩の優しさに、私は付け入ろうとしてる。


断らないといけないのに断ろうともしない。
卑怯な方法で先輩を繋ごうとしてる……。


「……はい。またお店にも伺います」



ーー神様。どうか私を許して下さい。

優しい京塚先輩の人柄に甘えて、癒されてみたい気持ちがどこかにあるんです。

大切にされてるんだと思っておきたい。

一番を願いたい人とは、きっと運命的な出逢いではない筈だから……。



食事を続けながら漬物が好きなんだと話した。

先輩はいろんな漬物の作り方を教えてくれて、最後にこう付け加えた。


「ナッちゃんが漬物好きなら良かった。僕は跡取り息子で、嫌いな女子とは結婚もできないから」


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