これを『運命の恋』と呼ばないで!
笑いながらサラッと受け流し難いことを喋る。
その言葉に答えることはせず、ははは…と笑ってごまかした。




「それじゃ、また誘うよ」


店に用事があると話す先輩と料亭の前でお別れ。


「ご馳走さまでした。ありがとうございました」


高級料亭の懐石料理。
確かに美味しかった筈なのに、ちっとも印象に残ってない。



タクシーに乗り込んだ先輩を見送って歩き出した。

オフィスの近くを通りがかり、見上げる窓に明かりが点いてないのを確認する。



(残業、終わったんだ……)


どこか気持ちがホッとする。
二人が今も一緒だったりしたら、私はとても遣りきれない。


目線を前に向けた。
その視界の中に、男女の姿が飛び込んできた。



(あっ……)


青空先輩と汐見先輩。
肩が触れ合うくらいの近さまで寄り添って、楽しそうに話し合ってる。



(終わったばかりだったんだ……)


見守りながら横に並んで歩ける人が羨ましい。

いくら望んでも、私は絶対にその位置には辿り着けない。


一緒に歩くなんて無料。

絶対にない……



(いいもん!私には理斗先輩がいるから!)


もう一人の先輩。

貴方がホンモノの救世主…ですよね……?



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