これを『運命の恋』と呼ばないで!
家に帰り、すぐにお風呂に入った。
お湯に浸かった後も、髪を洗ってからもずっと二人のことが頭から離れないでいた。


似合い過ぎてた。
死が迫っている私に比べ、二人の未来は輝かしい光に溢れてるみたいだった。

胸が痛くて仕様がない。
私も汐見先輩のように、青空先輩の隣に立って歩きたい。
遠慮がちに斜め後ろを追うことしかできない関係なんてやだ。
胸を張って並びたいーー!


……でも、それは叶わない願い。
それを思い知りたくなくて、急いでダッシュして逃げた。




「ヤッホー!どうだった!?元カレとの夕食は?」


少しだけ酔った智花から電話があったのは、日付が変わる前くらい。


「うん。懐石料理食べたの。美味しかったよ」


多分ね。
実は味なんてマトモに覚えてない。
高級食材を使って手間ひま掛けられた食事だというのに、何も記憶として残ってなかった。


「なぁに?美味しかったっていう割には元気なくない?」


ゴクゴク…と水を飲む音が聞こえる。


「うん、彼に『また付き合ってくれないか?』って言われたから迷ってて」


「ゴホッ!」と咳込む声がする。

「ゴホッ、ゴホッ」と二、三度言ってから、智花は気を取り直した様に聞いてきた。


「迷わなくていいじゃん!何で迷ってるの!?」


明らかに驚いてるみたいだ。


「その彼って、私と出会った頃に別れたって言ってた人でしょう?別れてからも忘れられないんだ…って話してたことあったじゃない!なのに、どうして…」


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