これを『運命の恋』と呼ばないで!
「うん…そうだったんだけど……」


智花には説明しづらい。
今は彼女がいる青空先輩のことが気になって仕方ないんだとは、どうしても話せない。


「迷ってる時間なんて無いのかもよ!?」


ギクッとする言葉を言われた。

そうかもしれない。
でも、私は……


「救世主かもしれない人が現れたのに逃がしちゃっていいの!?」


それはダメだ。
それは困る。
だけど………


「答えは保留にしてもらったの。だから、もう少し考えてからにする」


オヤスミ…と電話を切った。
これ以上、誰にも気持ちを掻き回されたくない。


今の電話でハッキリと分かった。
私は青空先輩のことがやっぱり好きになりかけてる。
だから、焦って選びたくないんだ。


考えるのが嫌になって、バサッと布団を被って寝た。

浅い眠りを繰り返しながら見たのは、教会でのウエディングの夢。


真っ白いドレスとモーニングを着た男女が並んで歩く。
賛美歌とオルガンの音色が流れる中、似合い過ぎる二人が笑い合う。



(私じゃないんだ……やっぱり……)


視界に映る背中が、さっきの二人とダブる。



『ナッちゃん』


聞き覚えのある声がする。


『君の相手は僕だよ』


手を握られ、歩き出そうとする。


『ほら、行こう。永遠の愛を僕と誓って』


ぎゅっと握られた手の感触が違った。

京塚先輩のものとも、青空先輩のものとも違ってる。


(誰……?)

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