わがまま姫の名推理


「君は一体何者だ……?」



やっと若い男の刑事が口を開いた。



「あたしは……どこにでもいる小学生、だな」



嘘はついていないはずだ。


それなのに。



「なに言ってるの。ちぃちゃんは天才少女、でしょ」



それなのに、ウサギがすかさずそう言ってきた。



「なにを根拠にあたしが天才だと言うんだ」



あたしは断じて天才なんかじゃない。


ただ、ほかの人間より知識があるだけだ。



「乱魔を捕まえるまで、あたしは天才なんかじゃない」



自分が天才かどうかなんて、どうでもいいが、乱魔は捕まえなければいけない。


いや、捕まえる。



そのためにも、まずは星野財閥に行かなければ。



「よし、みんな知由の話、聞いてたな。星野財閥に協力要請しに行くぞ」


「「「はい!!」」」



正広の的確な指示に全員が大きな声で返事する。


と同時にバラバラと行動を開始する。



「ちぃちゃん」



近くにあった椅子に腰掛けると、ウサギに呼ばれた。



「どうした」


「あのさ……」



ウサギは口ごもる。



「僕ってもう用無し……?」


「そんなことないぞ?」



もともと役に立っていなかったのだから、用もなにもない。



「そっかぁ……!」



だが、ウサギはその言葉の意味を理解していないらしく、喜んでいた。



……バカというか、単純な奴だな。



「ウサギにはもう一働きしてもらうからな」


「うんっ」



まったく。


さっきまでの落ち込みようはなんだったんだ。


あっという間に嬉しそうな顔をして。


あたしよりも子供っぽいではないか。



「ところでちぃちゃん。君は一体なにをしてるのかな?」



ウサギはわざとらしく言ってきた。



「ハッキングだ」


「ハッキング!?」



自分で聞いておきながら、そこまで驚くか。



だが、事実、あたしは空海のパソコンに侵入しようとしている。


かなり、ダメもとだがな。



暇なのだよ。


あたしみたいな子供にはこれ以上やることはないし。


だから、暇つぶしに、と思ってな。

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