わがまま姫の名推理
まあ、いい。
「次は、星野家にある金庫まではほとんど廊下1本だ。そこに罠を仕掛ける」
乱魔が来た、ということがわかるような罠。
「どんな罠?」
ウサギが首をかしげながら聞いてくる。
どんな罠って……
…………
……どんな?
「ちぃ?」
しまった……
「知由、お前まさか考えていなかったのか?」
「…………そのまさかだ」
バカにされる。
そう思って、あたしはうつむいた。
すると、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
……ほらな。
「なんだ、天才って言うからもっと上からなのかと思ってたけど、全然じゃん」
「あー、俺もー」
「なんか、意外と子供だよな」
「よかったわぁ、マジで」
「だよな。これで俺ら以上だったらプライドズタズタだわ」
……あれ?
あたしが思っていた反応とは少し違う……
「みんなちぃちゃんのこと、受け入れてくれてるよ?」
「考えてなかったなら、今からみんなで考えればいい。すべてをお前に任せっきりにはせん」
「そーだよ、ちぃちゃん。背負い込みすぎだよ」
2人にそう言われたのは嬉しいのだ。
しかし、ウサギには言われたくない。
あたしが自分ひとりで考え込むようになったのは、半分くらいこいつのせいだからな。
なんて、言わないが。
「ありがとう」
あたしは顔を上げ、笑顔で礼を言った。
「「「…………」」」
出た。
また黙るとは。
「ちぃちゃん、やっぱり笑ったら可愛いね」
こういうとき、ウサギは黙らないな。
……ん?
今、ウサギは「可愛い」と言ったか……?
あたしのことを?
そんなわけないか。
「……かなりの美少女じゃね?」
「ああ」
「これであのしゃべり方じゃなかったら完璧だよな」
コソコソと話しているが、全部筒抜け。
「ちぃちゃん、無自覚?」
「なにを自覚する必要があるんだ」
「…………」
お、珍しい。
ウサギが黙ることなどないと思っていた。