わがまま姫の名推理
「お前らなにやってるんだ。早く考えんと、日が暮れるぞ」
そうだった。
正広の一言で全員我に返る。
「廊下に、仕掛けるんだよな?」
「だったら、床になにか置いとくとか?」
「足がぶつかったのを合図にするってこと?」
「でも、それしかないよな」
「あ、そのなにかを拾った瞬間に明かりをつけるってのは?」
「なにか、が重要だが、それでいこう」
「小さすぎず、大きすぎない」
「乱魔が足をぶつけられるようなもの……」
そこまで話し合って、皆考えがでなくなったようだ。
だが、なかなかいい方向性だ。
拾った瞬間に明かりをつける、か……
それは思いつかなかったな。
問題はやはり、なにを置くかなんだが……
「ちぃちゃん、これって一か八かのかけだよね」
なぜこんなときにそんな呑気なことが言えるんだ。
「乱魔が僕たちの罠にかかるか、気付かずに通り過ぎるか」
まあ、そういうことにはなるな。
「でもさ、別にかからなくても問題ないよね」
「「「え?」」」
うーん、と頭をひねっていた刑事が顔を上げ、声をそろえて言った。
もちろん、あたしもだ。
「え、なんでそんなに驚くの?」
あたしたちの反応に困ったウサギは、少し焦っている。
「ウサギ、説明してもらえるか?」
「あ、うん……えっと、はじめから廊下は暗くしとくんだよね?だったら、乱魔が罠にかかって、照明をつけて……って、そんなややこしいことしなくてもいいんじゃないかなって思うんだ。それに、ちぃちゃんがラビットだってだけでも、乱魔はかなり動揺するはずだよ。わざわざ罠を仕掛けてまで動揺させる必要はない気がするんだ」
…………
今のあたしを一言で済ませるなら、開いた口が塞がらない。
それほど、ウサギの考えはよかった。
なるほどと納得させられるし、なにより今までのウサギからはこんなことが言えるとは想像出来なかった。
「……成長したな、ウサギ」
「え?違うよ?ちぃちゃんが考えすぎなんだよ」
「…………」
今ならさっきまでの刑事たちの気持ちがなんとなくわかる気がする。
これはなにも言えないな。
「はは……」
あたしの負けだ。
このまま乱魔と勝負しても、負けるに決まっている。