わがまま姫の名推理
第4章
成瀬一弥についての情報を集めるのには、そこまで時間を必要とはしなかった。
だが、空海についてはわからなかった。
さすがだと言うべきだろう。
空海のことを調べようとすれば、情報がすべて暗号化されていて、読解するのには難しすぎる。
時間をかければ解けないこともないだろうが、なんせ、やる気がない。
知りたい思いはあるが、ここまでして知りたいとは思わない。
「しかし暇だな」
星野財閥以来、乱魔からの予告状はなく、あたしは暇となった。
なにより、乱魔の動きが予測できない。
「そう言えば、乱魔について調べても目的はわからなかったんだよな……」
あたしはパソコンを立ち上げ、また成瀬一弥について調べることにした。
前に調べてわかったのは歳とか、家族構成。
これくらい、あたしが調べなくても警察に頼めば簡単に調べがつく。
つまり、これからがハッカーとしての力が試されるということ。
どこまで奴のことを知れるか。
すべて知ってやる。
あたしは負けないのだから──
「……ちゃん、ちぃちゃん!」
耳元で大きな声で叫ばれたら誰でも耳が痛くなるわけで。
「うるさいぞ、ウサギ」
あたしは耳を押さえながらウサギを睨んだ。
「もう、うるさいじゃないよ。こんなとこにこもりっぱなしは良くないよ。それに、ここ最近なにも食べてないでしょ」
あたしがこもっていたのは、書斎の隅。
暗くて狭いから、あたしのお気に入りの場所だ。
そして、ウサギに言われて気付いた。
あたし、3日くらいなにも口にしていない。
「はい」
するとウサギに板チョコを渡された。
…………チョコ?
ここは普通ご飯らしいものを渡すものだろう。
それが、なぜチョコなのだ。