わがまま姫の名推理
「一弥、お前はバカなのか?」
「は?」
「あれが嘘だ、というのがわからないのか?」
「……なにを根拠に」
一弥はわかりやすいくらい、疑いの目をあたしに向けてきた。
仕方ない。
きちんと順序立てて説明してやろう。
「約15年も身を隠していたんだぞ。そんなやつが捕まったから急に話す、なんておかしいと思わないのか。それに、もしあれが本当だとしたら、あいつはとっくの昔に自首してるはずだ。悪いことをしたという罪悪感を感じているなら、な」
しかし……
これは成瀬優弥を殺したのが意図的だ、ということがわかっただけ。
なぜ、成瀬咲も……?
『成瀬咲を殺したのは?』
するとちょうど刑事がそう聞いた。
『彼女を殺す気はありませんでした。もともと、成瀬優弥だけ、ということだったので……でも、彼にナイフを向け、殺そうとしたら急にその子が出てきて……間違って殺してしまったんです……』
これは……本当のことなのか……?
「……咲ならあり得るや」
すると一弥が少し笑いながら独り言のようにそう言った。
「ん?なにがだ?」
あたしは一弥を見上げながら聞いた。
こうすると背が高いな、と思う。
「いや、咲なら親父を守りに行くだろうなって思ってさ」
……つまり、あの柏木冬馬の証言は嘘ではない……?
しかし、間違いなく優弥のほうは意図的に殺しているはず……
あの言葉を信じるとするならば、柏木冬馬に優弥を殺すように指示した人間がいるということになる。
その人間を探ればなにかわかる……?
「ウサギ、ここでパソコンは使ってもいいのか?」