わがまま姫の名推理
あたしはいつもの癖で正広ではなく、ウサギに聞いた。
「あ、うん……」
ウサギの答えを聞くと同時に、あたしは黒いカバンからノートパソコンを取り出した。
そしてノートパソコンを開き、床にしゃがみこむ。
もう周りの音は耳に入ってこない。
調べるべきことは柏木冬馬に2人を殺すように指示したと思われる人間。
とにかく見つかるまでキーボードをカタカタと叩き続ける。
だいたいこんな感じか……
詳しいところまでは調べられなかったが、ある程度のことはわかった。
床にしゃがんでのパソコンの操作はなかなかやりにくいもので、あたしは息抜きに顔を上げた。
「ん?なにしてるんだ?」
すると一弥があたしのほうに近付いて来ようとしていた。
普通に声をかければいいのに……
なにがしたかったのだろう……
「ちぃちゃん、移動するよ」
ウサギにそう言われ、マジックミラーの向こうを見る。
柏木冬馬や刑事の姿が見当たらない。
ということは、取り調べが終わったらしい。
「わかった」
あたしはパソコンを閉じ、立ち上がる。
「らん……じゃなくて、一弥。さっさと来い」
一弥が固まっていたため、わざと乱魔と言いかけてみる。
どうやらきちんと聞き取ったらしく、目を見開いていた。
「柏木の証言が真実だと仮定する」
あたしは自動販売機がある休憩所の椅子に腰かけ、再びパソコンを開き、まだキーボードを打ちながら言った。
「あれが真実だとすれば、柏木に成瀬優弥を殺すように指示したのは成瀬優弥を恨んでるか、妬んでるやつと考えるのが妥当。そこで、まず考えられるのは敵の暴走族」