わがまま姫の名推理
「ほらよ」
すると一弥が近くにあった自動販売機で水を2本買い、そのうち1本を渡してくれた。
「ありがとう」
あたしは両手でそれを受け取った。
「なぁ……お前はどうしてラビットなんて名乗って探偵やってんだ?」
一弥が水を飲みながら聞いてきた。
「なぜそんなことを聞くんだ?」
そのようなことを知ったところで、お前にはなんの関係もないではないか。
「まあいい。退屈だし、ウサギが帰ってくるまでもう少し時間があるだろうから、話してやろう。あたしは好きでラビットと名乗っているわけではないんだ。お前はもうわかっているだろうが、いつもウサギがあたしの代わりとして推理を話している」
もう昔の話にはなるがな。
「だから、皆ウサギのほうを信頼している。なにより、ウサギの父親が警視総監だから、余計にな」
今は少し立場が逆転しつつあるが。
「だから、警察の人間の中でのラビットはウサギのことだ。あたしが本物のラビットだと知ってる人間はウサギとその父親、それからお前らくらいだな」
……なぜあたしは過去形にしないのだろう……
自分のことなのに、自分がわからないな。
「ちなみに、あたしは話せないウサギの妹ということになっている」
「お前、それでいいのか?」
一弥は心配しているかのような表情を見せる。
「ん?別に問題はないぞ?」
今は思うように行動させてもらっているしな。
「学校はつまらないのだ。どうして今さらかけ算など、わかりきったことを学ばなければならない。そんなの、とっくの昔に習得している」
だから、学校などあたしにはなんの意味もない。
警察でこうしているほうが、あたしは充実した時を過ごせるのだ。