わがまま姫の名推理
さて……
ウサギが戻って来るまで暇なのだが……
することがなにもない。
なんとなくパソコンを開くが、調べるべきこともない。
仕方ない。
あの証言だけでは本当に河西信太が犯人かはわからない。
今度はきちんと調べてみるか……
「ちぃちゃん!」
いつの間にか戻ってきていたらしく、ウサギが走ってあたしのもとに来た。
「どうした?」
「ちぃちゃん、ちょっと……」
……呼ばれる理由はきちんとわかっているつもりだ。
河西信太は犯人ではない。
今調べてわかった。
きっとウサギの聞き方が悪かったのであろうな。
だから、河西信太は乱魔を“知らない”と言ったのだ。
“聞いたことがない”のは、過去になにかあってそれを知られたくなかった、というところか。
それはどうでもいい。
「ウサギ、河西信太はもう帰してもいいぞ」
「うん、だと思った」
ウサギはあっさりとそう言った。
「彼、ホントに知らないの一点張りなんだもん。違うんじゃないかなぁ、とは薄々思ってた」
……ならなぜ言わない。
少しくらい反論してくれてもよかったではないか。
「ま、とにかく夕霧李紅を連れてくるよ」
ウサギは手を振りながら戻っていった。
……推理を間違えた……
一弥の言っていることは正しかったのだ。
根拠もなく、人を疑ってはいけない。
自分の憶測だけでは根拠にならない。
言ったかどうかは微妙だが、このようなことを言われたような。
しかし……
学習はできたな。
それにしても、河西信太には迷惑をかけてしまったな。
申し訳ない。
それからというもの、夕霧李紅は連行された。
最初は否定していたものの、ベテラン刑事が吐かせた。
こうして14年前の事件はトントン拍子に解決していった。