悲しみの果てに
••帰らない夫
だが、次の日から
本当に苳吾さんは家に帰らず
一週間のうち、一日、二日位は
夜中に帰り、自分の部屋で寝て
翌朝、病院へと行く?
そんな生活をしているみたいだ。
お父様からは、
「苳吾君とうまくやっているのか?」
と、連絡があり
「忙しい方なので、病院に寝泊まり
されることも多いですが
旨くいってます。」
と、答えると
「そりゃいかん、
それじゃ、孫に中々会えん。
院長に言って、早く帰らせる。」
と、言われた。
その電話の後も
相変わらず、苳吾さんと顔を合わせる
こともなく過ごしていた。
友達からも、
「お医者様と結婚なんで
やはり、綾香は凄い。」
とか、言われていたから
帰らない夫の愚痴は言えない。
だけど、暇だから
一緒に
買い物に行ったり
食事をしたりして過ごしていた。
「いいわね、綾香
ゆっくりした生活できて
こんなに出歩いても
何も言わない旦那様で」
「まぁね。
好きなように
過ごしなさいと
言われてるから。」
と、言ったら
幸せそうね、とか
愛されてる、とか
いいなぁ、とか
私もそんな結婚したい、とか
騒がれた。
結婚の話が決まった時
苳吾さんに
挙式も披露宴も新婚旅行も
なしと言われたが
父が頼み込んで
式は、身内だけ
お披露目もしない
新婚旅行もない。
と、なった。
まあ、みんなには、
写真みせれば良いか
と、考えていた。