悲しみの果てに

••ええっ?


「苳吾だ!鈴菜、そう言っただろ」
「何をおっしゃってるのですか?」
「なにって、俺は独身だし
鈴菜をずっと愛しているし
ずっと探していた。」
「もう、私はあの頃には戻りません。
愛菜と幸せにドイツで
暮らしています
有沢先生も綾香さんと
幸せになって下さい。」
「苳吾だ。
やはり、ドイツにいたのか。
それと、四井さんは
家族と幸せにしていると
思うぞ、御主人は、
うちの病院にも営業にも見えてるし」

「そうですか、それでは‥
えっ?御主人?‥‥営業?」
「やはり、聞いてないか?
あの時には、大西も新垣も退職
していたからな。
四井さんのお腹の子は
今の御主人の子だ。

俺は、鈴菜しか抱いていない。
当時もそう言ったが。
聞いてなかったか?
それとも、俺を信じてなかったか?」

「えっ、だって、
四井製薬の営業の方が
四井さんも院長も喜んでいると
おっしゃっていたから。
だから、私が邪魔をしては
いないと・・・」
「思って、俺の話しも聞かずに
姿を消した。
そして、家の鍵も変えて
日本を去った‥‥‥と。」
と、言うと
鈴菜は、コクンと頷いた。

「はぁ、やっぱり。
鈴菜。俺は、話しを聞いて欲しかった。
だが、鈴菜がそう思う気持ちもわかる。
俺が、鈴菜とつき合いだした時に
直ぐに両親に話していたら
良かったんだ。

鈴菜が、あまりにも
楽しそうに看護師をしていたから
まだ、いいと思っていたんだ。
俺は、鈴菜としか
結婚するつもりはなかったから。

それに、綾香さんを追い込んだのも
俺だと思うから、俺の子じゃないから
と、直ぐに離婚することも出来ずにいた。
今は、籍を抜いて
四井家に、御主人が婿養子に
入っているみたいだが。」

「ええっ。
そんな‥‥
私は·······
苳吾さんが、言ってくれていたのは
ちゃんと覚えていますが
ひとつ部屋の下にいるのだから
そうなってもしかたない
と思いました·····

その時 体調を崩して
結さんが、結さんの実家に行くように
言ってくれたのです。
 
結さんのご両親は、
私の母の事を
可愛いがってくれていたみたいで
私の事も大切にしてくれました。」
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