俺様彼氏はShy Boy?
「何か食べに行く?」
「却下、だるい」
「じゃあ、ピザでも頼む?」
「ピザな気分じゃない」
わがまま。
でも、そんなわがままを言ってくれるのはあたしにだけでしょ?
「何か作って?」
「えっ…」
「比奈の、食いたい」
前髪の隙間から覗く瞳が、捨てられた子犬のように見えて。
ユラユラと不安定に揺れる瞳に見つめられたら嫌だなんて言えないじゃない。
「うん、何が食べたい?」
「……パスタ」
知ってる。
海斗はトマトソースのパスタが好きだもんね。
それを知った後、いつか海斗に食べてもらいたくて何度も練習したんだよ?
家族に『また作ったの?』なんて呆れたように言われたって構わない。
海斗に美味しいって言ってもらえるように、ずっと練習してきたおかげで。
いまでは得意料理の一つ。
「トマトソースの、でしょ?」
フッと肩の力を抜いて、海斗に向って柔らかな笑みをもらす。
「よくわかってんじゃん」
「当たり前」
ちょっと得意げにフフンと鼻を鳴らすと。
少し冷たい視線があたしを突き刺す。
「早く作れ」
上から目線なのも気にならない。
だって、口許がずっと緩んだままだから。