俺様彼氏はShy Boy?
少し前を歩く海斗の後姿を見て。
さっきまでの時間は幻だったのかもしれないと思ってしまう。
優しい瞳をしていた海斗は、幻だったとか。
もしそうだとしたら笑っちゃうよね。
「……なんだかな…」
あたしの小さな溜息は、海斗には届くことはなかった。
トボトボと歩くあたしの頭の中はクチャクチャになっていて。
ただ不安でいっぱいだった。
海斗の言葉や行動一つで、感情の浮き沈みが激しい自分が情けない。
こんなにも情緒不安定なことは初めてで、心も身体も疲れてしまう。
そうなってしまう理由は単純なのに、ね。
ただ、海斗が好きってだけなのに。
教室に着くと、未来があたしを見つけて近づいてくる。
ニコニコしている未来に、あたしの笑顔を作るつもりでいたのに。
今のあたしはどんな顔をしているのだろう。
「須藤くんと一緒だったんでしょ?」
あたしの前に立った未来は、不思議そうにあたしの顔を覗き込んだ。
「どうして、そんな顔をしてるの?」
未来の言葉に曖昧に笑う。
どうしてって。
ちゃんとした理由があるわけじゃない。
だから、下手に未来に言って心配されるなら。
今はまだ、あたしの心の中だけに留めておきたいと思った。