俺様彼氏はShy Boy?


海斗のおかげで、二往復で済んだ教材運び。


「…海斗、ありがと」


頭を下げるあたしに、何も言わずに教室から出て行く。


「…海斗!!」


思わず呼び止めてしまったあたしの声に、少しだけビクリと反応したように見えて。

その場に立ち止まった海斗は、振り返ることなく。


「気をつけて帰れよ」


そう乱暴に吐き捨てて、また歩き出した。


その背中をただ見つめているだけで、あたしは何も言えなかった。

何を言ったらいいのかわからなかった。


海斗が見えなくなるまで、ずっと見つめたままでいて。

彼の後ろ姿が見えなくなったとたん、どっと押し寄せてくる疲労感に。

どれだけ緊張していたんだろう…と苦笑するしかなかった。


その場に座り込み、とたんに大きな溜息を吐き出していた。

だけど、自然と口許が緩んでしまうのは。

ほんの少しだけでも、海斗と話が出来たから。

海斗の優しさが嬉しかったから。


自分勝手だと思われたっていい。

あたしから海斗と離れる選択をしたくせに。

やっぱり海斗じゃなきゃダメなんだと思ってしまう。


どんなに笑ってても、心の中がポッカリと穴が開いたように感じたのは。

何かが足りないって感じたのは。

海斗がいないからなんだって、気づいてしまった。


「重症だ…」


この空虚な心の中を。

満たしてくれるのは、海斗だけなのかもしれない。



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