俺様彼氏はShy Boy?
「ちょっといい?」
いつも海斗といるときの甘ったるい声じゃなくて。
低くて感情も何もこもってない声と鋭いままの視線。
あたしの返事も聞かずに、美佳は振り返り歩いていく。
あたしが嫌だという選択肢は、はじめからないように。
今日、何度目かの溜息。
仕方なく、美佳の後についていくしかなかった。
美佳の後についてたどり着いたのは、ほとんど人気のない中庭。
今は雨は止んでいて、でもやっぱりジメジメする。
生温い風があたしの頬を撫でて。
体に纏わりつくようなそれが不快感を煽る。
「…ねえ」
一言も声を発することのなかったあたしに。
美佳がそう言いながらゆっくりと振り返った。
その顔は、いつもみたいに自信に満ちた嫌みったらしい笑顔に戻っていた。
その不気味さに鳥肌が立つほど、綺麗な顔は歪みきっている。
普段の美佳は確かに可愛い。
この子に言い寄られて断る男がいるとは思えない。
彼女に片思いをしてる人だってたくさんいるだろう。
美香が目をつけた男は、みんな美佳に堕ちるだろう。
それは、海斗でも例外ではなかった。