俺様彼氏はShy Boy?
「ここなら、2階の南校舎の一番端です。
右側に歩いていけば階段があるので、そこを下りて2階へ行って右へ真っ直ぐで着きます」
模範解答。
表情一つ変えないでそう乱暴に言って、あたしはまた校庭へと視線を戻した。
だけど、そんなことで彼らがいなくなるとは思えなくて。
あたしの前に立っていた彼は、あたしの視界を遮るように手のひらを目の前に差し出す。
「俺たち、この高校初めてだからわからないな~」
ワザとらしく『どうしようか、困ったな』と声を上げると、ここにいた他の人たちの視線があたしたちのほうへと向けられたのがわかった。
愛想なく説明をするあたしを、この人たちはどう思ったのか。
冷たい視線を感じて、あたしはまた小さな溜息を吐いてしまう。
「溜息なんてヒドイな~」
そういう彼の口許が、ニヤリとイヤらしく持ち上げられる。
あたしの顔がだんだんと引きつっていくのを必死で押さえた。
だって、彼のその不気味な笑みはあたしにしか見えないもの。
ここは案内所。
道に迷ったり、目的の場所にたどり着けない人が道を尋ねたって何もおかしなことなんてない。
それなのに、あたしは冷たい物言いで、この人たちを追い返そうとしている。