俺様彼氏はShy Boy?


廊下はまだ賑やかで、だけど、保健室の近くには何も設置されてないから人はほとんどいない。

未来に連絡して合流しようと思って、スカートのポケットからケータイを取り出した。


「今どこにいるの?」

あたしの問いに『まだ、教室』と、ちょっとうんざりとでも言うような声色に。

あたしはフフッと笑ってしまった。


『担任、こき使いすぎ』

「あはは、お疲れ」

『比奈もうまく逃げるんだもん、ヒドイよね』

「逃げたわけじゃないよ」

『嘘ばっかり』

「いやいや、ホントだって」


うん、嘘だけど。

だって、あの担任に捕まったら大変だもん。

先週の放課後のことを思い出して、未来が少し可哀想に思えてきた。

だって、女のあたしに大量の教材を押し付けるような担任だよ?

未来には悪いけど、逃げてよかったって思ってしまう。


「じゃあ、教室行くね」


そう言って、電話を切って。

小さく息を吐いて、ドアに預けたままだった身体をゆっくりと起こした。

『よいしょ』っと、年寄りみたいな掛け声に一人苦笑してしまう。


廊下に差し込む夕日は真っ赤で。

眩しさに瞳を細めながら廊下を歩いた。


< 353 / 479 >

この作品をシェア

pagetop