俺様彼氏はShy Boy?
廊下はまだ賑やかで、だけど、保健室の近くには何も設置されてないから人はほとんどいない。
未来に連絡して合流しようと思って、スカートのポケットからケータイを取り出した。
「今どこにいるの?」
あたしの問いに『まだ、教室』と、ちょっとうんざりとでも言うような声色に。
あたしはフフッと笑ってしまった。
『担任、こき使いすぎ』
「あはは、お疲れ」
『比奈もうまく逃げるんだもん、ヒドイよね』
「逃げたわけじゃないよ」
『嘘ばっかり』
「いやいや、ホントだって」
うん、嘘だけど。
だって、あの担任に捕まったら大変だもん。
先週の放課後のことを思い出して、未来が少し可哀想に思えてきた。
だって、女のあたしに大量の教材を押し付けるような担任だよ?
未来には悪いけど、逃げてよかったって思ってしまう。
「じゃあ、教室行くね」
そう言って、電話を切って。
小さく息を吐いて、ドアに預けたままだった身体をゆっくりと起こした。
『よいしょ』っと、年寄りみたいな掛け声に一人苦笑してしまう。
廊下に差し込む夕日は真っ赤で。
眩しさに瞳を細めながら廊下を歩いた。