俺様彼氏はShy Boy?
視線はそのまま校庭に向けたままで、ゆっくりと歩みを進めると。
あたしの進む先。
誰かの気配を感じたので、立ち止まって視線を廊下の先へと戻した。
廊下に差し込む夕日の眩しさに、かすんでよく見えなかった。
瞳を細めて、大きな人影を見つめていると。
少しずつ慣れた視界には、腕を組んで窓辺に寄りかかって。
でも、その人の視線はあたしのほうへと向けられている。
「……海斗」
顔がよく見えないはずなのに。
無意識にそう呟く自分にハッとする。
―…違うかもしれない。
窓から吹き込む風が、爽やかなアクアマリンの香りを運んでくる。
それだけで、違うかもと思う自分を否定して。
海斗だと肯定してる自分がいた。
少し着崩された制服。
少し眺めの黒髪が瞳に映った。
今は一人でいるみたいで、少しホッとする。
遠目ならまだしも、
こんなに近くで、彼女と二人でいる姿なんて堪えられそうもない。