俺様彼氏はShy Boy?


しばらくその場から動き出すことができなくて。

目の前には、あたしの大好きなオレンジジュース。

それを指で突っついて、その指先をただ眺めてた。


どのくらいそうしていただろう。

周りの声も、景色も、色も、何もなくなってしまったかのように。

ただ呆然としていた。


そんなとき、スカートのポケットの中でケータイがブルブルと震えたことでハッとして。

その瞬間に、周りの音が戻ってきて今が文化祭の途中だったことを思い出す。


時間を確認すれば、もうすぐ正午。

電話の相手は、ミッチャンだった。


「…はい」


その力ない声が、誰もいない図書室に微かに響いた。

電話の向こうには、昨日と同じテンションの高いミッチャンの声。


『比奈? 今どこにいるん?』


その声を聞いたとたん、あたしの涙腺は緩んでいくのがわかった。



「未来ちゃん、思い切ったな…」


ミッチャンたちと合流して、未来がいないことに気づいたミッチャンたちに、さっきあった出来事を簡単に説明した。


「でも、俺も賛成。比奈と海斗は、一度ちゃんと話したほうがいいと思うよ」


今にも泣き出してしまいそうなほど弱っているあたしをミッチャンは優しく頭を撫でてくれた。


< 372 / 479 >

この作品をシェア

pagetop