俺様彼氏はShy Boy?
ギュッと拳を握って。
何度も深呼吸して。
震える身体を無理やり動かして。
覚悟を決めて、海斗に話しかけようと口を開いた。
でも、すぐそこまで出かけた声はそのままあたしの中へと戻っていく。
意気地なし、ホント自分が嫌になる。
「何?」
あたしが声を発するよりも前に、非常階段に響いた抑揚のない低い声。
気づいていないと思ってたのに。
振り返ることなくそう言う海斗は、後ろにあたしがいることに気づいていたのだろうか。
「…あのっ……」
緊張でうまく声を出せなくて。
今度はあたしの間抜けな声が非常階段に響いた。
だけど、海斗はピクリとも動かずにいた。
ここからでは海斗の背中しか見えなくて。
だから、今どんな表情をしてるのかまったくわからない。
あたしがここにいることですごく不機嫌なのかもしれない。
それとも、あたしがいることにまったく興味がないのかもしれない。
こんな無関心な海斗も、付き合ってた頃はなんとも思わなくて。
ただ、隣にいられるだけで幸せだったのに。
今は、怖くて仕方ない。
俯いてしまったあたしに。
「何?」
もう一度、耳に届いた海斗の声。
でも、今度ははっきりと聞こえて。
ゆっくりと視線を上げると、その先にはあたしを見据える海斗がいた。