俺様彼氏はShy Boy?
自分からここに来て。
自分から隣に座ったのに。
何も話さないあたしに、今度は海斗が溜息を吐いたのがわかった。
遠くのほうで聞こえる文化祭の賑やかな音。
今、校庭で軽音部がライブでもやっているのか…
微かに聞こえてくる曲に、あたしは瞳をとじた。
「この曲、比奈が好きだって言ってた曲だよな」
あたしに向いていた視線は、空を仰ぐ。
そのまま後ろに手をついて空を見上げたままポツリと呟いた。
『海斗くんは、比奈が思ってる以上に比奈のことよくわかってる』
未来が言ってた通り、本当にそうなのかもしれない。
あたしの好きな曲。
あたしの好きな飲み物。
顔を合わせたわけじゃないのに、あたしの寝不足を見破って。
足音だけで、あたしだと気づいてくれた。
そんな海斗だから。
あたしの今の表情を見ただけで、あたしの心の中を見透かしてしまうのかな…
まだ、海斗のことが…好きだって。
気がついてしまうの、かな。