俺様彼氏はShy Boy?


「ああ、わかった。じゃあ、そこに比奈を連れて行く」


電話を切って、あたしのほうへ振り返ると。


「行くぞ」


それだけ言って、あたしの腕を掴んでた海斗の手が。

スーッと下りて、今度はあたしの手のひらを握った。


その海斗の行動に、ビクッと小さく震えたあたしを。

海斗は眉を下げ、悲しそうに笑ったんだ。


また、さっきと同じように海斗が盾となって人混みの中をすり抜けていく。

違うのは、腕を掴まれているわけではなくて。

ちゃんと、あたしの手を握ってくれていいること。

もう、こんなふうに触れてくれないと思っていたのに。

海斗の温かくて大きな手の感触に、鼻の奥がツーンと痛んだ。


このまま手を離さないで欲しい。

このまま二人でどこかへ行ってしまいたい。


そんなことを考えては、小さく頭を振って否定して。

でも、ずっと好きだったこの温もりはもう手放したくない…


「比奈!! 海斗!!」


だけど、あたしたちを呼ぶ声で現実に戻されてしまう。


ミッチャンの声に、海斗の手がいとも簡単にあたしの手から離れていく。

急になくなった温もりに、寂しさを感じずにはいられなかった。


離してほしくなんかないのに…

それはもう、叶わないのだろうか。


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