俺様彼氏はShy Boy?
海斗に添えた手は振り払われることはなかった。
そのことにホッとしながらも、ゆっくりと海斗の身体に腕を伸ばして。
勢いをなくした弱々しい海斗をそっと抱き締めた。
今の海斗が、本当の海斗なのかもしれない。
これが、先生の言っていた“本当の海斗”なのかな…
「比奈、俺……」
そこまで言って止まってしまう海斗の言葉を。
あたしは何も言わずに待っていた。
海斗の背中に回った手で、優しく撫でてあげる。
大丈夫、そういう思いを込めて。
でも変なの。
あたしが抱きしめてあげてるはずなのに。
海斗の匂いがすごくホッとして、気持ちが落ち着いていく。
あたしが抱きしめられてるみたい。
その宙ぶらりんの海斗の手が、あたしを包んでくれたらいいのにって願ってしまう。
もっと、ギュッとしてくれたらいいのにって…
少しだけ上げられた海斗の視線。
その先にいた先生は、あたしたちを瞳を細めて見つめながら優しく微笑んでいた。
それは先生としてとか関係なく、純粋に“よかったな”とでも言いたいような…
そんな表情だったと思う。