俺様彼氏はShy Boy?


「あっ…っと…」


海斗を諦めるために捨てたなんて。

言えるわけがない。

言い訳しても仕方ないけど、なんて言ったらいいのかいい言葉なんて見つかることもなくて、それを誤魔化すようにあたしの自分の耳たぶに触れてみた。


耳たぶの傷は、もうすっかりと治っていたけれど。

今は何もつけてない。


「なぁ、比奈…」


ピアスどうした?

そう聞かれるんじゃないかと、内心ビクビクしてる。

そんな気持ちを悟られないように、海斗へと視線を送ることができない。


でもここは素直に謝っておこう。


「ゴメンな…さっ…」

「ほら」


あたしの謝罪の言葉にかぶさるように、鼓膜を振るわす海斗の声。

ほら。と差し出された手にはキラリと光る黒い宝石。


「…どうして」


あの日、確かに空き教室の窓から捨てたはずなのに。

海斗の手には、オニキスのピアスが乗っていた。


< 462 / 479 >

この作品をシェア

pagetop