恋凪らせん
「また? バカじゃないの? バカじゃないの?」
「なんで二回言うのよ!」
「結子が二倍おバカさんだからに決まってるでしょー」
珠莉は「けっけっけっ」とアニメみたいな素っ頓狂な声で笑った。黙っていればすごい美人なのになあと毎回残念に思う。
小学校からずっと一緒の幼なじみ。お互い好き勝手言い合って、ほどよく喧嘩もするけれど、ちょっとやそっとじゃ破綻しない強靭な「縁」が私たちの間にはある。
自分の恋の縁はうまく結べない「結子」だけど、友だちの縁はこれでもかっていうくらい宝のように光ってそこにある。
珠莉はとてもいい子なんだけど、ちょっとだらしない面がある。何度もお説教してるのに直らないことがある。
しばらく会ってなかったけど、今は大丈夫だろうか。
「なーんで自分の恋を後回しにするの。奪っちゃえばいいじゃない。好きなんでしょ? 損な役回りにいつまで甘んじてるわけ?」
「仕方ないでしょ。向こうは私なんか眼中にないんだから」
「女には、寝取るっていう高等技があるでしょうが」
「そんな悪趣味な技は発動できない仕様です」
「じゃあさ、あたしと一緒に男と遊ぶ?」
「お断り。……っていうか、まだ遊んでるの?」
きっと睨むと、珠莉は「しまった」というふうに舌を出して、わざとらしくそっぽを向いた。私に追及されるのが嫌なら自分から話のネタを振るような真似しなければいいのに。
でも、そういう無防備さが珠莉の可愛いところなんだと思う。美人と可愛いを同居させて、誰にも束縛されず奔放に振る舞う彼女は本当に魅力的だ。
でも自分を大事にしない人はダメだ。何回も言っているのにこれだけは聞こうとしない。
異性を惹きつけてやまない珠莉の周りには、常に複数の男性がいる。
けれど誰とも恋人同士にはならない。特別なひとりをつくらない。
すべてが体だけの関係なのだ。