恋凪らせん
結局彼もあたしのことを見た目で判断していた。そこそこ長いこと一緒にいたのにその判断は覆らなかった。あたしも悪かったのだろうか。尽くす姿は彼を繋ぎ止める行為に、甘えた仕草は媚を売るように見せてしまったのだろうか。
別れはあたしから告げた。
利弘は少しだけ残念そうな表情になったけれど、理由を問い詰めたり、別れを拒んだりはしなかった。
『お互い楽しんだもんな』
いっそ清々しいほどの笑顔で彼が離れていってから、あたしは変わった。
もうどんなにあたしが声を枯らして叫んだって、ついたイメージは簡単には払拭できそうにない。それならそのイメージ通りに生きてやる。
自由奔放に遊ぶ、都合のいい体だけの女。
派手な顔立ちを活かす化粧、それに見合った服装、口調に態度。それらをすっかり身に着けて、今のあたしは世間を闊歩している。結子には心配かけてるけど、こっちのほうがよっぽど楽になってしまっている。
男なんて、淋しくて人肌恋しいときに適当にあっためてくれて、そこそこ快楽を味わわせてくれればそれでいい。
愛だの恋だのなんていう壊れ物を後生大事に抱きしめて、「運命だ」なんて勘違いと一緒に蹴散らされる想いなら、裏切られてしまうなら、そんなもの初めからいらない。
もう体だけでいい。その場限りでも優しくしてもらえるのなら、嘘でも「好きだよ」って言ってもらえるのなら、なにも望まない。
『ダメだよ珠莉、自分を大事にして』
結子の優しい声が耳の奥によみがえる。ごめんね結子、でもあたしはきっともう自分を変えられない。
そういう女にしたのは、あたしに勝手なイメージを植え付けたうえに喰いものにした男たちで、それに積極的に抗うことをしなかったあたし自身の罪だ。
あたしの咎であり、枷だ。