恋凪らせん



あたしがネット上で小説投稿を始めたのは二年前のこと。
小さいときから夢見がちな子と言われていた。すぐにぽーっと空想の世界に飛んでいってしまい、親によく呆れられていた。

本好きが高じて自分で文章を綴るようになったのはいつだったろう。小学生の頃には、かっこいい王子さまに守られるお姫さまや、なんでもできる魔法使いの物語を自由帳にびっしりと書いていた。誰かに見せることはしなかったけれど、すごく夢中になれて楽しかった。

中学校に進学すると、趣味が合う子たちで集まり、交換日記のようにノートを回してリレー小説のようなものを書いたりしていた。それまで友だちの書いた物語を読んだことなどなかったので興奮したし、自分のダメなところもわかったりでのめり込んでいった。息をするように自然に書けた時期だった。

進学した高校には文芸部があった。なんの迷いもなく入部したあたしは、そこでガツンと頬を張られたような衝撃を受ける。みんな上手いのだ。構成力が、物語の世界観が、表現のひとつひとつが自分とは比べ物にならない。
そこで初めてプロット作りとか、キャラクターシート作成などを学び、みんなと一緒に文芸誌を完成させたりした。打ちのめされることは多かったけれど、勉強になったことは間違いない。

けれど三年生になり部活を引退し受験勉強が本格化すると、ノートに書くのは物語ではなく小論文や考察になった。
首尾よく大学に合格し新生活を始めてみれば、講義やサークル活動で忙しくなり小説を書くことはおろか、読むことも少なくなってしまった。それでもそれなりに充実した大学生活を送っていたあたしは、ある日「小説投稿サイト」の存在を知る。

俄然興味が湧いた。しばらく忘れていた創作熱が甦ってきた。ちょうど新しいノートパソコンを手に入れたこともあって、すぐに登録し少しずつ物語を紡いでは投稿を重ねていった。
あれから二年経った今では、常連の読者さんや同じサイトで活動する作家仲間も増えて、とても充実した世界の中にいる。

大学に通い、サークル活動も楽しみ、バイトもこなして、小説を書く。
これが今のあたしの生活の軸を成している。楽しくて仕方がない。



< 43 / 63 >

この作品をシェア

pagetop