恋凪らせん
射抜かれた。
言葉ってこんなに痛いものだと思わなかった。弱いところをまっすぐ攻撃されて、心に穴が開いた。開いた穴から、怖くてずっと目を背けていたことが堰を切ったように溢れだしてくる。
『プロでもないのに』
その通りで反論の余地もない。作家気取りで小説なんか書いて公開してたって、あたしなんて所詮星の数ほどもいる「自称作家」のひとりに過ぎない。
本当は自分でもわかっている。「読者」なんて偉そうに言ったところで、本当に自分の書くもので満足してもらえているかなんてわからない。本当に待っててくれているかなんてわからない。
たとえ、あたしが急に書くことをやめてしまっても誰も困らない。誰も悲しまないし、すぐに忘れられてしまう程度のものだ。
それでも、「おもしろい」と言ってくれる人がたったひとりでもいるのなら、あたしは全力で書き続けたい。あたしだけが紡げる世界を書いていきたい。
本が好きで、書くことが好きで、いつか作家と呼ばれたい、いつか広く認められたい。そんな欲も心の裡にそっと忍ばせて、あたしは夢中で書き続けている。
いつかいつか……夢の彼方に――――。
サイトに投稿し始めたころは読んでもらえるだけでよかった。感想をもらえたらその日一日中舞い上がっていた。読んでくれる人が増え、ちょっとハードルを上げた欲が自分を奮い立たせた。応援してくれる人たちに喜んでほしくて無理をして、いろいろ見失いそうになって、今修司とケンカしている。
いつの間にか、あたしの両頬は涙で濡れていた。涙が外気に触れて顔は冷たいのに体はあたたかくて、あたしは修司に抱きしめられていることを悟った。彼の広い胸が嗚咽を優しく包んでくれている。
散らばったままの心を拾い集め、力の限りしっかり抱え込む。奥底に光るあたたかいなにかに気づいた。それが「初心」であると認識して、あたしは心を震わせた。