恋凪らせん



―― * * * ――


「すっごい興奮したね!」
「もう、サイコーだよ! いいライブだった!」

結子は隣で拳を固める純也の横顔を見上げた。

『Shield Go』というバンドが好きだというきっかけで、ふたりがつき合いだして半年ほど。メジャーデビューを果たし人気も上がっているバンドだが、インディーズ出身だけあって昔からのファンも大事にしている。ときどき小さなライブハウスでゲリラ的にステージに立ち、ファンを驚かせ、また楽しませている。
偶然、今夜のステージ情報が耳に入ったので、結子と純也は映画の予定だったデートを変更してライブハウスに向かったのだった。

おかげでこれからの約束には少し遅れてしまう。連絡はしてあるけれど、怒っていないだろうかと結子はスマホを取り出した。
LINEがきている。未読が「18」と出ており慄く。

「どうした?」
「珠莉からのLINEが……」

数字を見た純也が「うお」と大げさに身を引いた。おそるおそるタイムラインを開いた結子は思わず吹き出す。
「遅いよ」「まだ?」などのスタンプのあとに写真がずらずらと並んでいる。どれも珠莉と彼女の恋人の堀田のツーショットだ。頭突きをしたり、変顔を披露したりと、バーの中で撮っているとは思えない。

「まあ、楽しそうに待ってるみたいだな」
「そうだね、ゆっくり行こうか」

本気で好きな人ができたと珠莉から告げられたあの日、結子は心の中で快哉を叫んだ。これでやっと縁結びの「結子」になれる。

四人で会おうと提案したのは結子だ。初めは、主に堀田と純也が緊張していたがそれもすぐに打ち解けた。以来、驚くほど意気投合し、四人で遊ぶ機会も増えている。今夜もバーで飲んだ後はカラオケの予定だ。

「ご縁がありましたね~」
「まーた言ってる」

純也が照れくさそうに笑った。

あの日、「ご縁がありますように」と純也が結子の手に載せてくれた五円玉を、彼女は今も大事にもっている。



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