○(まる)
第一章「噛んだあとのガムは紙に包んでごみ箱へ」
 青い空、シャツの中を吹き抜ける春風。
 そんな4月の初頭、やたらと幸せな気分に浸っていた僕は、珍しく自宅近くの公園を歩いていた。
 などと書くと晴れて就職だか受験だかに成功した若者のようだが、残念ながら学校にも行っていなければ、勉強すらしていない、今流行りのニートって奴。
「あ、いっちゃん! ニ年以内に就職か大検とるか出来なかったら家追い出すからね」
 とは二年前の母の言葉だ。残念なことに、今だに大検も就職も出来ていない僕は、ちょうど今、家を追い出されたところなのである。
 うかつにも、僕は彼女の座右の銘が『有言実行』であることを忘れていたようだ。
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