RE. sEcrEt lovEr
「リハビリ中?偉いじゃん」

さっきまでの表情が一変、あたしを見つけるといつもの表情に戻り、駆け寄ってくれる。

なのに 顔を背けてしまうあたし。

…少々 後ろめたいことがあるからかもしれない。

「体調は大丈夫?」

「う、うん…」

話がしたくて、会いたくて ウズウズしていたはずなのに、いざ顔を合わせると言葉が出てこない。

「そっちは相変わらず忙しそうね」

椎名先生が見兼ねて声をかける。

「地獄っすね… シフト、エグいですよ」

口ではそう言いながらも、家にいる時より明らかにいきいきしているように感じられるのはきっとあたしだけじゃないはずだ。

(もっとも今はお疲れだろうが…)

極限状態を迎えた時は、あたしの病室であたしを目覚ましにしてウトウトしたり

凹んだりイライラしている時は、転職情報誌を大人買いしてみたり

予想外な行動に出るところは相変わらず“らしい”のだけれど、

誰にでも優しくて、誰からも信頼されて、誰の期待も裏切らない。

入院して初めて分かった“日向先生”の実態だ。
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