RE. sEcrEt lovEr
「寂しい?」

まるで考えていたことが伝わったかのように彼が核心をつく。

「…どうかな」

新しい一歩を踏み出そうとしている彼にそれは言っちゃいけない気がして言葉を濁す。

「そのうち金髪美女の彼女連れて凱旋してやる、俺の大切な人~とか言っちゃったりしてな」

ふざけて言った貴のその一言にあの時の言葉が蘇る。

“大切な人”

恋人以上に大切な存在だった片割れさん…

今の甲ちゃんにとってあたしはどんな存在なの…?

たくさんいる患者さんの内の一人?

パパに託された哀れな子?

それとも いつか口にした“妹”のままなのかな。

「おい、どうした?」

気がつくとあの日のような息苦しさがまた蘇る。

「なんでも…」

「何でもなくて泣くかよ?まさか胸…」

必死に首を振って否定する。

「それ、もしかして過呼吸か?」

カコキュウ…?

「はぁはぁ… たかぁ、つらいよ…」

“苦しい”んじゃなくて“辛い”の。

酸素も上手く入ってこないけど、それ以上に心が痛いよ。

壊れ物を扱うように優しく包み込む貴の手は大きくて、あたしは不覚にもその温かさに身体を委ねる。

「安心しろよ、今だけ“代わり”になってやる」

甲ちゃんが好きって言いながら、貴に甘える権利なんてないのに。
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