RE. sEcrEt lovEr
「…ぬ、絹。起きて」

ぼんやりした頭のまま、目をゆっくりと開けると甲ちゃんがベッドサイドにいた。

窓の外は黒いベールで覆われていて、部屋は間接照明の優しい光が溢れている。

どうやら、そんなに時間が経っていないらしい。

「怖い夢でも見た?すごいうなされてたけど」

「あ、うん…」

寝ている時まで悩むだなんて。 疲れが取れた気がしないのもきっとそのせいだ。

だけど 辛い現実が立ちはだかるなら、まだ夢を見ていた方が良かったよ…

どんな顔をしていいのか分からず、寝返りをうち背を背ける。

「…お仕事いいの?」

わざと遠ざける言い方にも、甲ちゃんはいつもと変わらない口調で答える。

「たまには休憩も貰わないとね」

そう言いながらも何か書類にペンを走らせる彼は果たしてその矛盾に気がついているのだろうか。

それからあたしが息苦しくて、胸が痛くて眠れなかったことも…

「過換気発作(過呼吸)だってね。気分はどう?」

やっぱり甲ちゃんはお医者さんで、貴が言っていたようなヤキモチなんて妬くわけもなくて。

「もう心臓のことは心配いらないから、何かあったら言っていいんだよ?」

また抱え込んじゃった。
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