RE. sEcrEt lovEr
「もう 大丈夫 だから…」

救いの手を差しのべてくれる甲ちゃんを前にしても、

あたしが装備していた鎧はあまりにも強靭で いつの間にか脱ぎ捨てるタイミングを失っていた。

「…じゃあ、その辛そうな顔は何? 絹の“大丈夫”とか“平気”て大概 大丈夫じゃない時だよな」

しかし、こういう時ですら甲ちゃんはあたしのテリトリーにすんなり入ってくる。

それはけしてイヤなことではないけれど、 その逆は…?

本当の貴方を知ることが許されているのは“彼女”だけなんですか…?

「…っ」

涙を堪えながら震える姿に気がついた彼がやや慌てた様子で訂正する。

「ごめん、そうじゃなくて。俺がもう少し早く気がついていれば良かった」

「甲ちゃんは悪くない! あたしが… あたしが 弱いから…」

感情が高ぶり、涙が頬を濡らす。

呼吸もまた苦しくなってきた。

「ゆっくり息して」

背中をさする大きな手の温もりですら、身を切られる様な思いをするのは きっと“彼女”への引け目なんだと思う。

「はぁ はぁ… 」

…あたしばかりが甲ちゃんを独占してしまってごめんなさい。

「絹」

俯くあたしを心配そうな顔でのぞき込む甲ちゃん。

「あたし… 生きていてもいいの?」

「え…?」

折角 助けてくれたのに。 繋いでくれた命なのに。

その愚問は彼の鎮痛な面持ちを目の当たりにすると、一瞬にして後悔に変わった。
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