RE. sEcrEt lovEr
でもね…

今、貴方の目の前にいるのはかつて愛した人じゃなくて、“ただの同居人”なんだよ?

暫く続いた沈黙を破ったのは、彼の突飛な一言だった。

「…絹は何でオペ受ける決意したの?」

「それは…」

最初はね、“お兄ちゃん”とのあの約束だけが生きる糧になっていた。

彼じゃなきゃ、彼に会えなきゃ嫌だって。

だけど、あの日パパの過去を聞いてその分生きなきゃって思ったの。

これから起こる楽しい出来事も苦しい試練もパパの分まで…

それが傍で支えてくれる人達の恩返しにもなるんだって。

あたしの返事を待たず、甲ちゃんは言葉を続ける。

「人間なんて弱い生き物だから 何かにもたれかかっていないと生きていけないんだよ、きっと」

「甲ちゃんも…?」

だから パパとの思い出を今でも大切にしてくれているの?

だから 彼女との思い出に鍵をかけているの…?

「うちは昔から家庭崩壊気味だったからね…

振り回されながらも今 悠耶と貴、それから絹と織依さんがいる家が拠り所になってるんだよ。

だからね、少なくとも俺は絹が元気になってくれて救われた。

それだけじゃ“生きる理由”にならないかな?」

ずるい…

どんな時も助けてくれるのに(告白に対して)アフターケアの保証がない甲ちゃんも、

自爆したにも関わらず、それでも尚 真実を追い求めてしまう自分も。
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