RE. sEcrEt lovEr
「やっと笑った。ゆっくりでも絹は絹のペースでいい。

その人に合うペース配分が誰にだってあるんだからさ」

そんなこと言われたのはママ以外初めてかもしれない。

大概の場合、(悪い意味で)特別だからって諦められてしまっていたから。

病気のことも、あたし自身のことも。

「貴が留学するなら、会いに行けばいい。航空券ならモデルのギャラとして請求するからさ」

「パパさん?申しわけないよ」

「…あの時のポスターのこと聞いた? 引き伸ばされて駅ビルに張られてた。退院したら見に行っておいで」

彼の考え方は天才だからか、はたまた生まれ持った天然ものなのか 観点のズレが常に生じているけれど

心配性で悲観的になりがちなあたしはそれに何度も助けられている。

そして今晩も遅くまで話を聞いてくれたおかげで、抱えていた不安は消え去ろうとしていた。

ただ一点、“彼女”のことを除いては。

だけど それはきっとあたしにとっての“お兄ちゃん”と同じなんだ。




いつかあなたを好きなあたし自身を好きになれる日が来るといいな… 今はただ それだけ…
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