RE. sEcrEt lovEr
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疲れているのに家に帰る気にはなれず、馴染みのバーに立ち寄る。
カウンターに腰掛けると、すでに来ていた弟がソフトドリンクでくだを巻いていた。
「甲斐は“いつもの”でいいな?」
「うん」
やれやれと弟の聞き役をしながら叔父がロックグラスを目の前に置く。
彼女が過呼吸だったことを教えたのは弟だったが、何故あの時言わなかったんだろうと彼はその日一日悶々としていた。
何であの時 無理にでも割って入らなかったのだろう。 今更ながら悔やまれる。
横並びに座りながらも兄弟の間には重たい空気が流れていた。
「…あの話てまぢなわけ? あいつのことはどうするつもりだよ?」
先に口を開いたのは弟だった。
もっとも今の彼には“あの話”よりも“あいつ”の方が気になるところだが。
「求めてくれる人がいれば、それが俺の居場所なんだよ」
「劉兄ぃ、これアルコール入れたぁ?」
ふざけた態度で明言を避ける兄に弟は苛立ちを覚える。
「たりめーだろ!ここは大人が酒を嗜む場所で、お前のような未成年(ガキ)が客として来るには早いんだよ」
「じゃあ、バイトを身内で固めるのは止めろよ…!」
年齢のことを言われると勝ち目はない。
イライラしながら扉を勢いよく閉めた。
「サンキュ、劉兄。助かった」
そう言うと彼はグラスの水をぐいっと飲み干す。
「お前もいい加減アイツと向き合えよ…」
「真面目な話は俺には無理だわ…」
カウンターで肩を落とす甥っ子に、彼はぼそりと呟いた。
「バーカ。お前も“アイツらの”ガキっつーことだよ」