RE. sEcrEt lovEr
封筒を渡し貴が病室を後にすると、再び黄色い歓声で埋め尽くされる。

「ねぇねぇ、“ついさっきまでいたお兄さん”てもしかして」

「うん、兄弟…」

「「キャ〜!」」

「貴弘先輩とイケメンの先生を至近距離で拝めるなら またお見舞いに来てもいい?」

…それは“あたしのお見舞い”とは言わないと思う。

女子の友情なんて恋愛を前にすると、実に脆く儚いものだ…

「絹はどっち狙ってるの?」

「狙うって… あたしは…」

玉砕しましたが、何か? …なんて言えるわけもなく、

相手にされるわけないよ、と言葉を濁す。

貴が留学したら 女の子達に目を付けられることもなくなるだろう。

甲ちゃんも以前にも増して忙しそうだし、体調が良くなれば“患者さん”もおしまい。

それはあたしにとっては幸せなことだけれど、何かが音を立てて崩れていくのを僅かながらに感じていた。

しかし この『アメリカからの手紙』が その後の運命を大きく変える起爆剤になりうるとは この時はまだ分からなかった。
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